右派ポピュリズムがアジェンダを掌握
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右派ポピュリズムがアジェンダを掌握:主流政党の危機

ドイツでは、極右政党である Alternative für Deutschland(AfD)が、従来の主流政党の言説を取り込みつつ、政策・議論の枠組みに影響を与えているという研究報告があります。

研究によれば、主流政党が移民・統合・治安などのテーマで、AfDに対応するかたちで議論を展開することで、結果としてAfD的な言説が「普通」にされてしまう構造があるとのこと。

このような状況は、ドイツのみならず欧州全体の民主主義・政党間競争にとって重要な警鐘と見なされています。

経済が停滞し、社会の分断が深まる中で、「誰が議論の主導権を持つか」が重視されており、AfDが「議題設定者 (agenda-setter)」になる可能性に注目が集まっています。

移民・安全保障を巡る発言で揺れる首相 Friedrich Merz

首相 Friedrich Merz は、「都市風景 (cityscape) に当然ながらこの問題がある/大規模な立ち退き (expulsions) を行うべきだ」といった発言をし、移民・安全保障を巡る議論を激化させています。

特に「娘さんに聞いてみてください」という発言を通じて、女性・若年層の安全の観点から移民を語る手法が批判を集め、与党内・野党からも「背景に極右的枠組みをもつ言説だ」との声が上がっています。

こうした発言は、移民を問題視する言説を主流政党がいかに扱うかという点で、前述の「主流政党がAfD的議題を追従する」構図ともリンクしています。

世論調査では、Merz の保守政党連合が伸び悩む中、AfD が追い上げを見せており、次期統一州選・連邦選挙を見据えた政治的緊張が高まっています。

選挙制度改革と民主主義の信頼:ODIHRが提言

OSCE Office for Democratic Institutions and Human Rights(ODIHR)は、2025年2月に実施されたドイツの早期総選挙について最終報告を公表し、法制度の改正・選挙資金監視・女性の参政促進・デジタル偽情報対策などを含む改革を促しています。

調査では、2017年・2021年の選挙からのフォローアップ状況として、いくつかの提言が「部分的にしか実施されていない」と指摘されています。

背景として、選挙への信頼・政治参加・情報環境の変化(SNS等)など、民主主義の質を巡る課題が浮上しています。特に上記のAfDの台頭・主流政党の議論追従の問題とも関連しており、制度だけでなく議論の枠組みそのものが問われています。

今後、ドイツの政党・メディア・社会がどのようにこれら改革を実践し、政治的安定と民主的正統性を維持できるかが注目されます。

ドイツ政治は現在、「誰が議論を主導するか」「移民・統合・安全保障を巡る言説がどのように変化しているか」「制度面での信頼確保」が大きな焦点となっています。

海外にお住まいの方、ドイツ語環境で暮らす方にとっても、こうした動きは生活・社会のインパクトとして無視できないものです。

今後も、選挙(2026年州選など)に向けた動きや政党間の構図変化、言説の変遷をフォローしていく価値があります。