ドイツ人の友人のこと(1)
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知り合ったのは20年以上前

自分がまだドイツにも行ったことがない23年ほど前に、ドイツ人の彼女とはカナダで知り合いました。正確には友人の友人だったわけですが、彼女も日本を旅したことがあり、日本人である自分にもフレンドリーでした。誰とでも仲良くなれるタイプの人で、いわゆるヒッピーの人でした。その頃はすでにカナダの永住権を得て、カナダで暮らしていたわけですが、生活スタイルもなかなか個性的で、自分でペイントしたワゴン車に、一軒家のベースメントを借りて、宿のない友人や知り合いを泊らせたりもしていました。仕事は不定期で幼稚園の先生やベビーシッターをしていたと思います。

夜はディスコや飲み屋を徘徊して、ほとんど家にいないような生活です。まだ若いし体力的にも全然平気って感じでした。自分はたまに他の友人と会うくらいでしたが、とにかく心の広い、懐の深い、人情味のある人間でした。そんな性格から、多くの人に好かれていて、何か困ったことがあったら、彼女に相談する子も多かったです。何よりドイツ出身で、欧州からカナダに来たばかりの学生などが、友達が出来なくて寂しくしていると聞くと、すぐに彼女はその学生に連絡して、一緒に遊びについれて行き、カナダ人コミュニティにも繋いでくれる、そんな存在でした。

ヒッピーの宿命か

いろんな人に会いましたが、このドイツ人の友人Nさんは本当に良い人でした。ただ、気になることがなかったわけではなく、若さ故の自由な行動が、自分にはついていけないなと思うこともしばしば。

人が良いので、悪い人も近寄ってきてしまいます。特に男性は、泊まる場所がないという理由でよく家に泊めていたそうで、一夜限りの関係も多く、それが原因で大家さんから締め出されたことも。そして、アルコールとマリファナの常用。これが、一番気になる点でしたが、決して周りに勧めているわけでもなく、カナダでは当時ほぼ合法のような状態でしたので、日本のように吸っているだけでは逮捕はされなかったと思います。

とにかく、見知らぬ男性を部屋に止めて、現金を盗まれたりしたこともあるようで、ガードは甘かったようです。ヒッピーの彼女にはそうした自由な生活が合っていたんだと思います。

数年おきに連絡をとっていたが

そんな生活スタイルなので、連絡が急に取れなくなることも多々あり、メールはともかく、携帯電話をなくしたり盗まれたり、消息が不明なことも多かった彼女。それでも、数ヶ月すると別の友人から、連絡が取れたという知らせを聞いて、ホッとしていました。

3年ちょっと前に、15年ぶりに家族でカナダへ行くことになり、是非彼女にも会いたいと思い連絡をとっていました。どうやら、自動車事故を起こして、運転免許を剥奪され、仕事に行けない状況と聞いて少し不安でした。それでも、まめに連絡をくれていたし、住んでいる住所ももらったので、訪ねることに。

衝撃の再会

いよいよ再会の日が来ました。カナダに入ってから、すでに十日ほどが経っていて、レンタカーでもらった住所に行きました。割と大きな古い家で、中に入るといわゆるシェアハウスになっていました。読んでも誰も出てこず、郵便受けには10名くらいの名前があり、怪しい感じの家です。

5分以上待ったと思いますが、突然彼女が部屋から出てきて、我々とハグをします。少し興奮状態で出てきて、バタンと部屋を閉めます。少し立ち話をした後、突然「しまった!!!」と大声で叫びます。なんだと思ったら、鍵を持たずに部屋を閉めたので、インロックしてしまったとのこと。近くにいた、管理人?のような人にスペアはないかと聞いていたのですが、ないとのこと。

やたら焦っているので、一体どうしたんだろうと思ったら、我々が来るので、ケーキをオーブンで焼いていて、そのオーブンがついたままなんだと。それはまずいし、下手すれば火事になります。

次の瞬間、彼女はなんとドアを蹴り破りました。

それを見て、管理人の意地悪そうなおばさんが、「壊すの何回目なんだよ!」と呆れています。すると、その管理人と口喧嘩をはじめ、我々を部屋に入れました。どうやら管理人ともシェアハウスの住人ともトラブル続きなんだとか。

そして、ケーキが焼けたので、外の庭で食べようということになり、部屋を出ると、今度は彼女の携帯電話がありません。先ほど、部屋のドアを蹴破って、部屋の前の棚に置き忘れたのですが、無くなっています。

真っ先に疑ったのは、意地悪な管理人。「あんたが奪っただろう!」とまた喧嘩が始まります。

ここまで、再会から10分ほどの出来事です。

警察署に被害届を出しに

明らかに取り乱した彼女は、以前のままと言えばそうなのですが、化粧もせず髪の毛もボサボサ、そして、歯も何本か抜けている状態です。あまり健康そうには見えませんでした。それもそのはず、アルコール中毒のようで、いつも酒を持ったボトルを持って歩いています。最初は水だと言っていましたが、その日は水筒にワインが入っていたようです。

唯一の連絡手段である、携帯が盗まれたことで、彼女は怒っていて、絶対にあの管理人が意地悪で隠したんだと。警察に届けを出しに行きました。その道中もホームレスやジャンキーのような人たちにあって立ち話。15年ぶりの再会でちょっと残念という感じでしたが、今日はもう嫌なことが続いたからイライラする!マリファナを買って帰るわ!といいお店に買いに行きます。

我々は、当時小学生の子供と一緒にカナダに来ていたので、流石にこの環境に長居するのは良くないなと感じ、翌週改めてご飯に行きましょうということに。携帯がないので、我々の宿泊先まで来てもらい、ご飯をご馳走しようということになりました。

約束の日

その後携帯が見つからず、宿泊先の玄関に赤い風船をつけておくから、来て欲しいと伝えました。ドタバタの再会でゆっくり話もできず、今回は是非と思っていましたが、何時間待っても来ませんでした。こちらからは連絡ができないため、どうしようもありません。子供を連れて、あの治安の悪いエリアに行くわけにもいかず、家族だけで食事に出ました。正直がっかりしましたが、あの状態では仕方ないかもねと忘れることに。

とうとう帰国の日まで連絡はなく、そのまま家路に着きました。帰国してから、2週間くらいして、メールが来て、あの日は本当にごめんなさい。体調が悪くて、起き上がれなかった。。。。ということでした。おそらく、酒を飲み過ぎてフラフラだったのでしょう。もう驚きもしませんでしたが、本当に悪かったと謝っていました。

我らに怒りは全くなく、心配だけが残りました。

 

ドイツ人の友人のこと(2)に続く