商標登録の話
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ある「うどん屋」さん

自分がまだ高校生だった頃、地元で評判のうどん屋さんがありました。

ただ、その店内には張り紙がしてあり、「こちらが聞くまで、注文はしないでください。」とあります。

忙しいから、厨房スタッフが聞くまで喋るなということです。

よく見ると、ウェイターはおらず、厨房のスタッフが注文を聞くというスタイルです。

何という横柄な、上から目線な店なんだと思いましたが、常連さんは、「いつもの!」と言って、頼んでいます。

とにかく、色々と疑問だったのですが、大変美味しかったので、その後、高校の友人と二人でうどんを食べに行くことに。

そんな雰囲気の頑固オヤジがやっているような店ですので、学ランを着た高校生が行っても良いものか迷いましたが、友人はぜひ行きたいと言います。

そして、学校帰りにいくと、ちょうどカウンター席が空いていました。

そして、例の張り紙見て、じっと注文を聞かれるのを待ちます。

我々の後に、二人組みのサラリーマンが入って来て、厨房のスタッフは、そちらに注文を聞き始めます。

その後も、高校生の我々は、ずっと無視されているような状態になり、痺れを切らした自分は、ついにスタッフの人に、「僕らは注文をとってもらえないんですか?」と恐る恐る聞きました。

すると、カウンターの目の前に座っているにも関わらず、「ああ、いたの?」と言って、ようやく注文を聞いてもらえました。

高校生なので、完全に舐められていたようです。後から来た客の注文を先に聞いたのも、わざとでしょう。

それ以来、その店に行くことはありませんでした。

商標登録の裁判

しばらくすると、その店と同じ名前のうどんチェーン店が、街の中心部や商業施設の中に店を出し始めます。

やはり美味しいから、繁盛して、店を拡大したんだと思っていたのが、実はそうではなかったようです。

それは、高校生の時に行ったお店が元祖のうどん屋さんだったのですが、そこで修行をした弟子の人が、勝手に店の名前を商標登録し、独立して同じ名前で始めたということが、真相のようでした。

それに対して、お店の大将は激怒し、弟子を相手に裁判を起こします。

結果は、元祖の店の大将が負け。

結局は、先に商標登録をした方が勝ちということで、元祖のお店の大将は、その名前を使えなくなり、仕方なくお店の名前を変えて、営業を続けます。

この話は、割と有名で、どの店か分かる人は分かると思いますが、今でもその弟子が始めたチェーン店は日本全国に展開しています。

言ってみれば、弟子に裏切られ、大事な店の名前を勝手に使われた上、自分はその名前を使えないように使用差し止めになってしまうとは、何とも悲しい結末です。

自分は、あの時の大将の客に対する横柄な態度と張り紙をなぜか思い出していました。

当時はまだこうした商標登録について、あまり注意を払う人がいなかったのも事実で、商売上の大将のミスでもあります。同時に、弟子の裏切りでもあります。

しかしながら、現在でも、日本の企業はヒット商品などが出た後に、その商品名を商標登録しようとすると、すでに外国の会社に使われていたというような話を聞きます。

日本企業は未だに、そうしたことに少し疎いところがあるのか、ありとあらゆる商標が全く関係ない会社や個人に取られているのも事実です。

商標登録の世界は、悲しいかな、取ったもん勝ちです。

ドメイン取得も似たようなことがあります

ホームページに使われる、「ドメイン」は、商標登録ではありませんが、そのサイトオーナーの名前だったり、ビジネスを展開する上で非常に重要なアイテムになります。

ドメインは、例えば.comのように、世界で通用するものから、最近では、末尾が.tokyoのように、日本の都市名のドメインもあります。同じ名称でも、末尾の.com, co.jpなどで、その価値も変わってくることがあります。

ちなみにドメイン名は、短ければ短いほど、価値が高いとされています。

これは、取得者が毎年更新して継続していくのですが、会社の担当者が変わったりして、更新忘れということが、たまに起こります。

そうすると、そのドメインはフリーとなり、取得が可能になります。

取得が可能なら、もう一度取り取り直せば良いじゃないかと思われがちですが、時すでに遅し。獲物を虎視淡々と狙っているドメイン転売業者がいます。

こうした業者は、有名な会社名を使ったようなドメインや、わかりやすいドメイン名を主に、あらゆる名前のドメインを買っています。

そして、その名前が必要になった会社などに、高値で売りつけるのです。ある意味先見の明がある者が、次に流行る商品名称などを狙って取得しています。

実際に、私が経験した自分のドメイン失効も当時お願いしていた担当者が更新をし忘れ、取り直すため現在の所有者にコンタクトを取ってみると、そのドメインの見積もりが送られて来ました。

その額なんと、「60万円近く!!」でした。

これはやられたと思い、何度か交渉していくうちに、少しづつ値段が下がるものの、ドメイン一つに何十万円も払う気はなく諦めました。

しかも、送金して本当にドメインが手続きされて戻るかも不明で、詐欺の可能性もあり、あまりにもリスクが大きかったため諦めました。

同時に、そうしたドメイン転売業者の存在を知らされて、それ以降、更新忘れが無いように徹底して管理をしています。

忘れた方が悪いのか?意図的に狙って転売している業者が悪いのか?

倫理的には、後者は横取りして高く売りつけるという、半ば脅しに近い行為になることもあるので、手続き上問題なくても、悪意は伺えます。

最近では、個人に至っては、ホームページを持たず、SNS上での活動や商売という方も沢山おられます。

そうした場合には、ドメインの取得は必要ないのかもしれませんが、同じ名前の商品を騙って、偽物を売り付けるなどの行為もあるため、有名になる前にその商品を登録するという人もいるようです。

先日、WBCで活躍したヌートバー選手が、「ヌートバー」という名称で、自分の商品を持ちたいと考え、何年も前に商標登録をしていたそうです。

その夢叶い、何と今回彼の「ヌートバー」という名前の商品が日本で発売されることになったそうです。

野球選手の枠を超えて、アメリカ人のそうした権利意識の高さを垣間見た気がしました。