
自分では解散できないドイツ議会
ショルツ首相の不信任案が否決された。想定内だが、これによりシュタインマイヤー大統領が議会を解散し、来年2月23日に総選挙となる見通し。
自分で解散ができないのは、かつて不安定な政治が続いて、極右政党ナチスを誕生させてしまったことから、ルールが厳しいためだ。しかし、今回シュタインマイヤー大統領も同意しているので、総選挙はほぼ確実。
政治の不安定さに加えて、ドイツ経済の下降、ロシアとの関係、移民政策、EUの役割など、課題が山積みで、とても悪い状況のドイツ。
こうした不安定な情勢化には、必ずナチスのような極右政党が登場し支持を集める。
現代のドイツ人にとって、ナチスの犯した罪は、もはやトラウマ的なものなので、極右政党が政権を握るなんてことは、断じて許されないはず。
おそらく、国全体がそうした空気にあっても、ドイツがどういう国かを知っていれば、この選択はしないだろう。
世界的に右傾化の流れ
戦争や不法移民が起こす問題は、確かにエスカレートしている。
市民も不安だ。だからと言って、極右政党の政治は誰も求めていないはず。
極右思想が支持を集めるのと、政治の舵取りをするのとでは、話がちがう。
そんなことになれば、ドイツはますます孤立するだろう。
このことを知らずに、日本のネットニュースコメント欄には、ドイツが自分の国を守るために支持を集めているAfdという政党がいて素晴らしい、何ら不思議はないし、喜ばしいことだと、賞賛するコメントが多い。
では、実際にこうした極右思想がもっとエスカレートした場合、ドイツに入国した日本人も不法移民だと勘違いされて、襲われる可能性は高くなる。
日本人だから大丈夫?そんなことはない。
実際にドイツに住んでいる者からすれば、現在の状況は非常に不安だ。
不法移民の犯罪よりも、極右思想の人間に襲われる方が正直怖い。
そうした極政党を称賛するコメントをしている人間が、実際にドイツに来ることがあって、外国人排除の被害にあっても賞賛できるのか?
極右政治が罷り通れば、ドイツ国内で襲われたり差別されたり、排除されるのは、あなたかもしれないのに、無責任な称賛コメントを残さないでほしいと思う。
日本人は他の国のことになると一生懸命意見を述べるのに、自国の政治や会社のルールにはダンマリ。だから、国や政治家の良いように利用されてしまう国民になったのだと思う。
移民問題
これから日本も抱えるであろう移民問題。政治はあくまで、右と左の両極があり、バランスを保ちながら民主的な政治を実現している。それがどちらかに傾けば、国民の生活にも悪影響が出る。
どこの先進国も少子化、人口減少で、今や移民無しでは、社会が成り立たない状態なのに、移民排除を掲げていては、将来国が成り立たない。
確かに、ドイツはメルケル政権で移民を抱えすぎたかもしれない。しかし、いまさら全員帰れとは言えないだろうし、ドイツの社会に溶け込んでいる人も多い。ドイツに住む人が皆世話になっているのも移民のおかげだ。
不法移民や犯罪を犯す者は、もちろん退去して貰えば良い。法を犯すのは何も移民だけではなくドイツ人にもいる。
とにかく、今の状況は我々のような外国人にとっても居心地が良くない。その感覚は、海外に住んだものしかわからないだろう。
普段、移民排除の運動がなくても、排除されている感覚になることはしょっちゅうだからだ。
その風当たりが移民に対してもっと強くなれば、ドイツ人にとっても、生きにくい社会になる。
日本もそうならないように願う。